1・2・3月は、卒業・就職までに「親知らず」を抜いてほしいという依頼が増えます。今年は5月になっても、ぽつぽつと抜歯の依頼があります。
初診では、お口の中全体と親知らずの状態をチエックしてからレントゲン写真を撮ります。親知らずは、はえ方や歯根の形・大きさで抜歯の難易度や抜歯後の腫れ方・痛み・トラブルなどの程度が大きく違ってくるからです。
患者さんに親知らずの状態・抜歯のリスクを説明して同意を得てから抜歯の日時を決めます。
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1)「親知らず」とは。
「親知らず」は、大臼歯の一番後ろにある歯で智歯とも言われます。
前から数えて8番目の歯なので、歯科医師は「8番」と呼んでいます。
18〜24歳くらいではえてきますが、人によって、はえてこない人もいます。
近頃は親知らずがもともとない人も増えてきました。
親知らずでも、抜かなくて良い場合があります。
(1)上下顎の親知らずが正常にはえてきて、しっかりかみ合っている場合。
(2)骨の中に完全に埋まっていて、現在〜将来にわたって問題が無い場合。
(3)きちんと歯磨きができて、現在〜将来にわたって問題が無い場合。
などです。
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2)親知らずによるトラブル・抜歯の理由
親知らずが斜めや横向きにはえてくると、きちんと歯磨きができないので歯ぐきが腫れて痛むことがあります。我慢していると親知らずや手前の大切な大臼歯まで虫歯や歯周病になってしまいます。
また、変な方向にはえてきた親知らずは、かみ合わせの邪魔をしたり、歯ぐきや頬の内側を傷つけます。ほっておくと、かみ合う位置がずれてきて肩コリや顎関節症(顎が痛くなったり、口が開きにくくなったりする病気です。)になることもあります。
こんな時は治療をしても再発することが多いので抜いた方が良いでしょう。
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3)親知らずを抜歯する時期・年齢
20歳代が良いです。はえてきたら、なるべく早く抜いたほうがよいでしょう。
親知らずを抜くと顎の骨に大きな穴ができますが、若い人は骨が盛ってきて穴がふさがります。
でも、歳をとってから抜くと骨の盛り方が悪くて大きな凹みが残ります。ここが不潔になって虫歯や歯周病になることもあります。
また、歳をとると親知らずが骨と癒着して抜けないこともあります。
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4)抜歯後のトラブル(腫れ・痛み・麻痺など)
親知らずの抜歯後に、口が開きにくくなったり、腫れ、痛み、麻痺、発熱、顎関節症などのトラブルが出ることもありますが、多くは1週間ぐらいで治ります。
歯科医師によって意見は色々ですが、抜歯直後は、しっかり氷や保冷剤でしっかり冷やした方が良いと思います。テレビでスポーツ選手のアイシングを見るとしっかり冷やしていますね。
しっかり冷やすと翌日の腫れ方が少なくなります。痛みも軽減します。
ただし、抜歯直後は麻酔が効いているので冷やしすぎに注意してください。
具体的なアイシングのやり方は、ここに分かりやすく記載されています。
冷やすのは抜歯した日と翌日ぐらいで止めてください。いつまでも冷やしていると血流が悪くなって傷の治りが悪くなります。
親知らずの根が下顎神経に接していると、抜歯時に神経を傷つけて唇が麻痺することがあります。抜歯前のレントゲン撮影で歯と神経の位置関係を調べ、神経を傷つける心配がある時は大学病院(京大)を紹介します。
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5)抜歯にかかる時間
10分〜1時間程度。歯の状態によって全く違います。
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6)抜歯後の注意
「何時になったら食事しても良いですか?」とよく聞かれます。麻酔が効いていると唇や頬をかんで傷つけたり、飲んだ物をこぼしたりするので感覚が戻るまでは飲食を控えてください。
食後、抜歯したところに食べ物が入っても激しくうがいをしたり、無理にとったりしないでください。
歯磨きも普通にしてもらっていいのですが、うがいは軽く口をすすぐ程度にしておいてください。あんまりぶくぶくやると骨が露出して痛くなります。
麻酔薬には血管を収縮させる薬が入っているので麻酔が切れてから出血してくることがあります。そんな時は、いすに座った状態で清潔なガーゼ・コットン(ティッシュペーパーでも良いでしょう)などを丸めて出血している所にあてて30分ぐらいずっとかんでおきます。それでも止まらない時は、歯科医師に連絡してください。
痛み止めは麻酔が効いて痺れている間に飲んでおくとよく効きます。
血のめぐりが良くなると、痛くなったり、出血することがあるので、激しい運動・飲酒・長時間の入浴は避けてください。タバコも傷の治りを悪くするようです。
7)親知らず抜歯の費用
初診時は、初診料やレントゲン写真料に加え、痛みや腫れのある人ではお薬代もかかるので約3,000前後になることが多いです。
抜歯自体の費用は、簡単なケースでは約800円、やや難しいケースは約1,500円、難しいケース(骨の中にほとんど埋まっている場合)は約3,500円です。
そのほかに再診料、投薬料、レントゲン写真料などもかかりますので、ケースによって差はありますが、トータルでは親知らずの抜歯1本あたり約2,000から 5,000円前後になることが多いです。
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写真のケースでは下の親知らずの前の歯がむし歯になっています。歯周病も進んでいます。上の親知らずは斜めにはえて歯ぐきや頬の内側を傷つけていました。
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